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地震発生3カ月が経過してもなお、多くの倒壊家屋が残されていた=2024年4月、石川県珠洲市、林敏行撮影

 高齢化が進んだ地域に大きな住宅被害が生じた能登半島地震。家を再建しようにも、高齢者が長期の住宅ローンを組むのは通常は難しい。住宅再建支援の融資には高齢者向けの特例がある。年金生活の人でも融資を利用して自宅を再建できる可能性がある。次の災害への備えという意味でも頭に入れておきたい。

 その制度は、住宅金融支援機構が実施している災害復興住宅融資の「高齢者向け返済特例」だ。

 災害復興住宅融資とは、自治体から「罹災(りさい)証明書」の交付を受けた被災者が利用できる住宅ローン。「長期固定金利」「融資手数料・保証人不要」という特徴がある。

 住宅金融支援機構の林憲政・住まい再建支援部長によると、災害復興住宅融資には、「満80歳までに完済」というルールがある。ただ、高齢者ほど返済期間は短くなり、月々の返済額は高額になりがちだ。

 通常の災害復興住宅融資を利用し、65歳の人が1千万円を返済期間15年で借り入れた場合、4月現在の融資金利(年1.21%、新機構団信あり)で試算すると、毎月の返済額は約6万1千円。年金生活者にとって軽いとは言えない金額になる。

 「一般的に地震災害では築年数が経過した古い建物ほど被害が大きく、その住人は高齢者が多い。高齢者が融資を受けられる仕組みを考えないと、住宅再建は現実には進まないのです」(林部長)。そうした課題を解決するために、熊本地震(2016年)を契機に創設されたのが、「高齢者向け返済特例」だ。

 この特例を利用できるのは60歳以上の被災者。「罹災証明書」の被害程度に応じて、建設・購入資金などの融資を申し込むことができる。

 返済期間は、融資を受けた人が亡くなるまで。月々の支払いは利息のみだ。例えば、1千万円の融資を受けた場合、特例の4月現在の金利は2.67%なので、返済額は月当たり2万2千円程度に抑えられる。元金は、亡くなった後に土地・建物を売却するなどして一括返済する「リバースモーゲージ型」の融資だ。

 では、1千万円借りたが売却代金が800万円など、融資額に足らなかった場合はどうなるのか。

 林部長は「通常の融資なら相続人に残った債務の請求があるが、この特例では返済する必要はありません」と説明する。

 つまり相続する家族に負担が及ぶことを心配せずに、融資を受けられるのが大きなポイントだ。

写真・図版
高齢者向け返済特例(災害復興住宅融資)のイメージ

 特例制度ができたのは、20…

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